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SJDとは何か?

本日は,そもそもSJDとは何か,私がここで何をしているのかについて書きます。

一言でいうと,SJDは法学博士課程です。背景として,まずアメリカのロースクールの仕組みについて少しご説明します。アメリカには,大学レベルの法学部は基本的にありません。ロースクールは,大学院レベルの,弁護士になるための学校です。アメリカ人が弁護士になるためには,大学卒業後,ロースクールで3年間かけてJD(ジェーディー,ラテン語のJuris Doctorの略)という学位を取った上で,いずれかの州で弁護士試験に合格しなければなりません。

多くのロースクールには,一年でLLM(エルエルエム,Master of Lawsの略)という学位が取れるプログラムがあります。これは基本的には,米国外で法学部を卒業している実務家などの留学生向けです。LLMを取ると,原則としてニューヨーク州の弁護士試験を受験することが出来ます(最近,受験要件が厳しくなっているようですので,試験協会のHPを御確認ください。)。日本の弁護士や法務部員の方がアメリカのロースクールに留学する場合,ほぼ全ての方がLLMプログラムに入学します。JDとLLMの違いについては,私がかつてVanderbilt University Law Schoolに留学していた時代に書いた以下の記事もご参照ください。

http://vanderbilt-law-japan.blog.so-net.ne.jp/2007-01-24

そしてSJD(エスジェーディー,Doctor of Juridical Scienceの略)は,学者を目指している人向けの,博士課程です(学校によってはJSD,稀にPhD in Lawとも呼ばれます。)理系科目や経済学などの博士課程であるPhD(ピーエイチディー)に相当します。いずれにせよ,JD及びLLMの上位に位置付けられ,「アメリカの法律の学位で最も進んだもの(the most advanced law degree in the United States)」とされています。

JDやLLMに比べて馴染みが薄いのは,そもそもSJDを設けているロースクールが少ないこと(いわゆるトップ20ぐらいのロースクールでも,半数ぐらいの印象です。)と,ほとんどの学校が毎年若干名しか入学させないことなどが理由だと思われます。LLMを取得した留学生で,とくに研究に熱心な人がそのままそのロースクールのSJDに進むのが通常であり,多くの学校が入学の条件として「その学校のLLMを優秀な成績で卒業していること」を求めています。

SJDでは,JD及びLLMのように授業を履修することはほとんど無く,指導教授の元で各自が設定したテーマについて研究します。入学するためには,JD及びLLMで要求される大学時代の成績,エッセイ,履歴書,推薦状なども必要ですが,なによりDissertation Proposal(研究計画書)が評価されなければいけません。要は,「この学生の研究は面白そうだ。私が指導してやろう。」と請負ってくれる教授がいないと入学できないのです。

SJDを卒業するには,一定期間内に論文を完成させて口頭試問に合格することが必要です。私の通うアイオワ大学ロースクールの場合,1年間通学した後はどこで研究を続けても良い(本国に戻ったり,仕事についたりしてよい)のですが,その後5年以内に口頭試問に合格することが条件になっています。最短何年で取得できるのかはよくわからないのですが,某トップ校ではどんなに頑張っても5年以内には卒業できない,という話を聞いたことがあります。

さて,先ほどLLMを優秀な成績で卒業した人がSJDに進むと書きましたが,実は私はJDしか持っていません(さらにあまり優秀な成績でもありません。)。そんな私がなぜSJDを取ろうとしているのかを話し出すととても長くなってしまうので,一言にまとめると,「法律を教えるという自分が好きな仕事をするために,アメリカの法学位で最高のものが欲しかった」ということになります。

ここまでこのブログを読んでくださっている奇特な方はうすうすお気づきかもしれませんが,私はそうとういい歳です。日本の大学の法学部を卒業した私は,日本の民間企業で働いていました。当時は弁護士になろうとは全く考えておらず,司法試験を受けたことさえありませんでした。人事異動で国際法務を担当することになり,そこで出会ったアメリカ弁護士にあこがれて,ロースクールに留学しました。留学途中に会社を辞め(学費は返済しましたが,多くの方にご迷惑をかけてしまいました。),JDを取得し,ニューヨークの弁護士事務所に就職しました。その後東京オフィスに移り,また別の事務所に移り,そして外資系インハウスもやり,今回の留学の直前は某政府機関で任期付公務員として働いていました。

そして,実務に携わる一方で,非常勤講師として日本の某ロースクールで国際系の科目を5年ほど教えてきました。学生に経歴の話をするとたいてい驚きますし,「先生はいったいどこに向かっているのですか?」と聞かれたこともありました(笑)。某政府機関での任期が切れたら何をしようかと考えたとき,今までいろいろやってきてそれぞれ魅力があったけど,やはり教えることが一番好きだという思いが強くなりました。就職の面接をするとたいてい「とてもユニークなご経歴ですね。」といわれることもあり(皮肉かもしれませんが私はポジティブに取るようにしています。),それならとことんユニークさを追求しようと思い,たぶん世界でも稀であろうJD+SJDになるべく,少し「人生のお休み」をいただいてアメリカに戻ってきた次第です。

だいぶ長くなってしまったので,ではここで何をしているのか,については次回以降に書きたいと思います。