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SJD一年間の総括

先日、SJD Committeeにて最初の大きな章(第三章)のドラフトが承認され、めでたくSJD Candidateになりました。これはどこの学校でもそうだと思うのですが、SJDを取得するためには、入学後の一定期間(本校では一年間)に要件を充たしてSJD Candidateという「SJDを取得するための資格」を取らなければいけません。そして今後5年以内にペーパー(Dissertation)を完成させて口述試験に合格すれば、晴れてSJDを取得することが出来ます。

研究を始めたのは、去年の8月でした。期末試験の無い我々SJDは,4月末に一年目を終えます。途中に約一か月半の冬休みがあったことを考えると、研究していたのは実質7か月、本当にあっという間の一年目でした。夏休みには一旦東京に戻り、ロースクールの非常勤講師や各種研修・セミナーの講師などをして過ごしつつ、かねてから温めていた教科書第二弾の(今度は英語で)執筆にとりかかろうと思っています。

自分の備忘録を兼ねて、この一年の流れを以下のとおりまとめてみました。前にもお話しましたが、このSJD Candidateになるための要件は、四つの書類(Proposal, Outline, Literature Review, One Main Chapter)を提出して承認を受けることです。指導教授のライツ先生との会合は不定期で、1・2週に一度程度、ライツ先生を含む3人の教授で構成されるSJD Committeeとの会合は年に三回でした。

2016年8月22日  秋学期開始
2016年9月2日   第一回SJD Committee
2016年10月4日  Proposal & Outlineドラフト提出
2017年10月25日  SJD Workshopにおける第一回プレゼン
2016年11月4日  第二回SJD Committee、Proposal & Outline承認
2016年11月8日  Literature Reviewドラフト提出、第三章執筆開始
2016年12月1日  秋学期終了
2016年12月12日  Literature Review承認
2017年1月17日  春学期開始
2017年3月2日   第一章ドラフト提出、第四章執筆開始
2017年3月21日  第一章改定ドラフト提出
2017年3月23日  SJD Workshopにおける第二回プレゼン
2017年4月14日  第三章執筆開始
2017年4月21日  第三回SJD Committee、第一章ドラフト承認
2017年4月30日  春学期終了

通常Dissertationは、少なくとも三つの大きな章プラスIntroduction, Background, Conclusionなど短めの章で構成されます。人によっては、Literature Reviewを一つの章にする場合もあります。私の場合、大きな章が三つあるのですが、最もイメージが沸かない、書きにくい章から始めました。そのため、執筆開始から最終ドラフト完成まで、当初の予定よりも長い3か月近くがかかってしまいました。来学期もアイオワで過ごすことに決めたので、長くともあと一年、できれば半年でDissertationを完成したいと思っています。

研究の過程で、教授と何度も議論を重ねるとともに、他の学生が書いたものも含めて数多くの玉石混淆の論文を読んできました。その中で感じたのは、「良い論文」は「読みやすくわかりやすい論文」であるということです。「読みやすいが中身の無い論文」はあったとしても,「何が書いてあるのかわからない良い論文」というのは考えにくいです。こちらも備忘録として、「良い論文」に共通している要素をまとめてみました。

• 既存の研究には何が足りないのか(Gap)、本論文がいかにしてそのGapを埋めるのか(どこにValueがあるのか)を明示している。
• Introductionに限らず、常にロードマップ(これからどこに向かうのか)を明示している。例えば、判例を紹介するのであれば、その判例によって何を示したいのかをあらかじめ述べる。
• 抽象論に終始せず、具体的な例を示す。
• 一文一文が短い。セミコロンでつながっている文章は、まず間違いなく二つの文に分けたほうが良い。
• パラグラフも短い。そして前後のパラグラフとの繋がりが明確である。
• 定冠詞、単数複数を含め、文法上の間違いが無い。こうした間違いがあると、そちらに気をとられて内容が頭に入ってこない。
• 専門用語、外国語、省略語が少ない。避けられない場合は、用語集を別途作るか少なくとも脚注に説明を入れる。全く説明なくイスラム法の用語を羅列してある論文を読んだときには、一ページ目で読む気をなくしました。この例は極端だとしても、読者に手間をかけさせないような工夫は重要です。
• 文脈から明らかでない限り、He, She, They, Thatなどの代名詞を使わない。
• 脚注をおろそかにしない。参照論文のどこを、なぜ、どのように参照しているのかを明確(ブルーブッキングも正確)にする。
• 書く範囲を広げすぎない。どうしても触れる必要性がある場合、“beyond the scope of this paper”という決まり文句を使って、「重要ではあるが、本論文の対象範囲を超えている(ので次回以降の研究課題としてふさわしい)」ことを示す。

こうして並べてみると,なんだ当たり前のことばかりじゃないか,と思われるかもしれません。ただ,数万語に及ぶ長い論文でこれらの点を全てクリアするには,推敲に推敲を重ねなければならないので,非常に時間がかかります。とても地道な作業ですが,仕事から離れて好きなことに集中できたことの幸せを感じています。