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このブログについて

5月30日記事追加 「SJD総括」を追加しました!

私は,2016年夏からアイオワ大学ロースクール(University of Iowa College of Law)の法学博士課程(S.J.D.)に在籍して研究をしています。もともとはニューヨーク州の弁護士(さらに元をただせば日本のサラリーマン)で、アメリカ系弁護士事務所や日本の政府機関などで働いていました。アイオワでの研究生活ということで,とてもニッチな話題が多くなり、また、不定期での更新になってしまうと思いますが、お付き合いいただければ幸いです。

SJDやアイオワ大学ロースクールに興味があるが情報が全くない,という方のためにGmailアドレスを設定しました。お問い合わせなど,sjdiniowa★gmail.com(★を@に変更)までいただければ幸いです。

SJD総括

JDを卒業してからはや10数年。もともと日本の会社でサラリーマンをしていた私にとっては,JD留学そのものが「おっさん留学」でした。まあ見た目は若かったので,実年齢を知ったアメリカ人同級生がびっくりして騒いでいたのが懐かしく思い出されます。

JD卒業後は,ニューヨーク州弁護士として,ニューヨークの巨大ローファームに始まり,同期の20%が解雇されたリーマンショックを何とか潜り抜けて東京オフィスへの異動,東京オフィスで出会ったアメリカ人上司を追って別のローファームに移籍,東日本大震災をきっかけにアメリカ人上司と別れ,やがて外資系インハウスへ,そしてなぜか役人として法執行を行う立場に。

まあ経歴のユニークさだけはなかなか人に負けない人生を送ってきましたが,さらに年齢を重ねるにつれて,やはり「好きなことを仕事にするのが一番幸せだ」ということに今更気づき,教えることを本職にするためのステップとして,博士課程への留学を決意しました。また,決意を後押ししてくれたのは,たぶん日本の大学時代に唯一私を評価してくださっていた(と思いたい)恩師の,「別に何歳であっても,本当にやりたいことがあるならそれは決して遅くない」というお言葉でした。

しかしアメリカのロースクールの博士課程は,基本的にLLMを取得した留学生の中で特にアカデミック志向の学生向けに作られたものなので,ほとんどの学校でLLMの取得,それも同じ学校のLLMで優秀な成績を修めることが応募要件になっていました。とりあえず,そうした要件がホームページ上に明確に書かれていない6校にだけ応募しました。そして,私を拾ってくれたのは,アイオワ大学ロースクールでした。

しかし今になって思うと,本当にアイオワローに来られてよかったと思います。まずは,大変な人格者でいらっしゃるR指導教授の懇切丁寧な指導の下に,論文を完成させることが出来たこと。Y教授とD教授というこれまた素晴らしいお二人がコミッティーメンバーになってくださったこと。(D教授とは,比較的年が近いこともあり,ファーストネームで呼び合う仲で,彼のつてで今夏にはアメリカのロースクール教授の学会に出席します。)

さらに,2年間という短期間で(某トップスクールでは,最低5年間かかると聞きます),アイオワローで初のSJDとして卒業できたこと。(ちなみに私の名誉のために言っておくと,SJDの3年目や2.5年目の学生も複数おり,アイオワローの学位認定基準が著しく低いというわけでもなさそうです。)。アイオワの大自然の中で,研究に集中しつつ,ときにはアウトドアも楽しむことが出来たこと。そして,韓国人留学生のW君,中国人留学生のJ君,ウガンダ人留学生のD君,トルコ人留学生のM君との,生涯続くであろう友人関係を築くことが出来たこと。

W君夫妻がお祝いしてくれました。W君は,一回り近く離れた弟のような存在です。
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愛車のJEEPをバックに,左からJ君,W君,私,M君
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思い出にアイオワグッズをいっぱい買ってしまいました。モノポリーのアイオワシティーバージョン,「アイオワポリー」(全くゴロが良くありませんが。。。)もあります。
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もしかしたら,今後何らかの御報告をこのブログですることがあるかもしれませんが,とりあえずはここで筆を置きたいと思います。ここまで読んでいただいて,本当にどうもありがとうございました。私の体験が,何かの参考になったり,何かのちょっとしたきっかけになったり,もしそういったことがあれば何よりの喜びです。

(J.D. 2007,S.J.D.2018卒業生M)

なお,お問い合わせなど,sjdiniowa★gmail.com(★を@に変更)までいただければ幸いです。

授業担当

卒業式の翌週,アイオワロースクールの非常勤講師として授業を行いました。先日の卒業式では,教授,スタッフ,卒業生の名前が書かれた冊子が配られたのですが,私の名前が卒業生としてだけではなく,教授陣の末尾にも載せられていて,ちょっと感動しました。

さて,この授業は,春夏秋冬の休み期間中に開催される,一週間の集中授業であるIntersession Courseの一つとなっています。普段の授業ではなかなか難しいような,実務家を招いて行う専門性の高い授業や,交渉術・訴訟戦略など体験型の授業が行われるのが特徴です。

私が担当するのは,1単位分のInternational Securities Regulationという科目です。1単位分は14時間,一学期を通じての授業であれば一週間に一時間だけですが,集中授業ですので,3.5時間の授業を月から木まで連続で行い,金曜日に期末試験を行うというスーパーハードスケジュールです。

内容的には私の専門であり,日本でも類似の内容の授業をロースクールで担当しているのですが,この授業のための準備は,たぶんこの2年間のSJD生活の中で最も大変でした。私は普段から,1時間の授業であれば少なくとも3時間程度,内容によっては数日から一週間をかけて教材の準備や授業の練習をしています。それが14時間分必要なこと,留学生向けの授業は2年目の秋学期にも2回担当しましたが,今回はJD向けの授業であること,日本の授業とは逆にアメリカ人の観点から教えなければいけないことなどが,大変さの理由です。

本来は,授業担当が決まった3月頃からすぐに準備を始めるべきだったのですが,それをしなかったのは,忙しかったからではなく,実はやる気の問題でした。というのも,学校からは5人以上受講生がいないと授業がキャンセルになる可能性があるという脅し(?)を受けており,そもそも授業が成立するかという大きな不安があったのです。

初めて開催される授業であること,卒業式後の授業なので受講の可能性があるのは新2,3年生であること,アイオワロースクール自体学生の人数が少ないこと,既にインターンシップを始めている学生もいること,そもそも無名の外国人教師であることなど,基本的に不安要素しかありません。

4月に入って,教師専用のホームページから履修学生数を確認することが出来るようになったのですが,しばらくはずっとゼロのままでした。毎日チェックしていたところ,やっと一人の登録が。その後少しずつ履修者が増えてゆき,やっと5人を超えたと思ったら,キャンセルが出るというような日が続きました(なぜか履修のキャンセルだけ学校から直接メールが送られてきます)。

SJDの同級生や知り合いの一単位分の受講料を払ってまでも,サクラとして参加してもらうくらいの覚悟でしたが,R指導教授が他の教授やスタッフを通じて宣伝してくださっていたこともあり,最終的には正式な受講生が8人,聴講生が5人と,無事開催が決まりました。

学生と一緒に。

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実際の授業では,以下のことを心掛けたり,実践したりしました。

〇 一日の授業を午前2時間,午後1.5時間に分け,計8つの大きなトピックについて講義する。各トピックを,3つ程度の小トピックに分ける。

〇 期末終了直後であることや集中授業であることを考慮し,アサインメント(宿題)を多すぎず少なすぎず,かつ判例だけでなくニュース,論文,実際の契約書などバラエティに富んだものにする。

〇 レクチャーとソクラテスメソッド(問答形式)をミックスし,必ずしもアサインメントを読んでいなくても,誘導して考えさせるようにする。

〇 各トピックの途中や最後に四択のレビュー問題を行う。スマホのPlickersというアプリを使って,学生の理解を確認する。このアプリは初めて使ってみたのですが,非常に良いです。あらかじめ学生に暗号化されたカードを配布し,学生には正解だと思うカードを掲げてもらいます(ほかの学生の答えがわからないようになっています)。スマホを学生に向けると,スキャンがカードを読み取って,教師にだけ,だれがどの選択肢を選んだかがわかります。

〇 テーマに関連した映画やYouTubeのビデオを見せて,ポイントの印象を強めるようにする。

〇 シラバスには,扱うトピック,試験形式,採点基準,アサインメントなどの基本的項目だけではなく,試験問題の例題,アサインメントを読むときに念頭におくべきStudy Questionなど,できるだけ情報を開示する。

〇 期末試験は,授業内試験であれば一単位なので一時間の試験になるが,いわゆるテイクホーム(試験を受け取ってから三時間以内にメールで提出)形式にして,何を参照しても良いとする一方で,厳格な字数制限を設定する。

これらは,私が今まで日本での授業や研修で培ってきたノウハウです。また,JD時代に,大量のアサインメントを課しておきながら授業ではごく一部しか触れない不合理な教授や,情報をできるだけ開示しないで生徒を混乱に陥れるいわゆるHide the Ballタイプの教授が大嫌いだったことも多分に影響しています。

授業中の筆者

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周到な準備が功を奏したようで,正式な学生のレビューコメントは成績開示以降になりますが,一人の学生からは,「自分がアイオワローで受けた授業の中で,最もうまく教えられていた(best-taught)授業でした」との感想を直接もらいました。学生の採点は無記名形式で行われる(教授が受け取る回答にはランダムに設定された番号しか記載されていない)ので,かならずしもお世辞100%ではないと思います(笑)。まあ,採点結果提出後に,授業貢献度に応じて成績を調整する機会がありますので,主観の入る余地が全くないわけではないのですが。。。

何はともあれ,これで私のSJD生活も無事成功裡(?)に終了しました。次回は,SJD生活を総括してみたいと思います。

卒業式

今回は,5月11日に行われた卒業式の内容を御紹介します。アメリカ流の卒業式は,十数年前にJDを取得したヴァンダービルト・ロースクールで経験しているので,今回はそれほど思い入れは無かったのですが,参加してあらためて良いものだなと思いました。

会場は,大学所有のコンサートホールでした。壇上には教授たちが,自分が卒業したロースクールの色とりどりのガウンを着て勢ぞろいしており,なかなかの壮観です。校長の挨拶,卒業生代表の挨拶(成績ではなく人気投票で選ばれたようです)に続いて,約200名の卒業生が,一人一人壇上に上がって教授からストールという帯を掛けてもらう儀式が行われました。

MCL(比較法修士),JD,LLM,SJDの順番に名前が呼ばれるのですが,SJDは私一人なので,大トリです。ちょっとびっくりしたのは,名前を呼ぶ係を務める教授から事前にメールがあり,名前の発音の練習をしたいので読み方を留守録に入れてほしいというリクエストがあったことです。教授は日本人の名前の発音がフラットなことを理解しており,外国人学生を含め,読みの難しい学生には全て確認しているそうです。とても誠意を感じました。

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壇上でストールを掛けてもらう筆者

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指導教授のR教授と一緒に。2年間大変お世話になりました!R教授が声を掛けてくれなければ,そもそも私のSJD留学は実現しませんでした。また,こちらで教える機会を与えていただいたのもR教授のおかげです。

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ロースクールの国際学生サークル(といってもほぼ全員アジア人ですが)のメンバーと一緒に。アイオワロースクールはとても良い学校だと思いますが,国際的なダイバーシティという点では,やや学校としての努力が足りない気がします。LLMも非常に小規模ですし,SJDは始まったばかりです。SJDの第一号として,何か貢献ができないかと考えています。

口頭試問

だいぶご無沙汰してしまいましたが,本日は口頭試問があり,めでたく合格しましたので,忘れないうちにその内容を書き留めておきたいと思います。

三月中には,既に博士論文の第三章を完成させ,導入部と結論部を追加して,全てのドラフトをコミッティーに提出していました。この口頭試問は,SJD取得のために論文とは別途要求されるもので,英語ではDefenseと呼ばれ,コミッティーメンバーの教授三人が論文の内容について質問し,それに対して口頭で回答するものです。

私が口頭試問を受ける第一号になるため,どのように準備すべきかという情報も無く,とりあえず論文を読み返しました。全部で10万語弱と長大な論文のため,自分で書いたにもかかわらず,ただ読むだけで丸二日かかり,まあよくこれだけ書いたなとあらためて思いました(審査するほうの教授も大変ですよね。)。はじめは想定問答の作成や,主要な引用論文の読み返しもしようかと思ったのですが,力尽きてしまい,結局は各章の「まとめ」的な部分を何度か読み返し,重要なポイントだけは間違えないようにして口頭試問に望みました。

当日は,D教授は出張中のため空港から(!)テレビ会議での参加になり,ほかのSJDの学生が三人見学に来ました。冒頭に主任教授のR教授から,Defenseは別に教授が攻撃して君がそれを守るという趣旨ではなく,これだけの論文を書いているんだから,単にその学識・知識を披露する場と思ってもらえばよいとのお言葉がありました(あまりプレッシャーは減りませんでしたが。)。時間にして一時間程度,例えば次のような質問をされました。

〇 多くの事案が紹介されているが,一番重要なケースはどれか。それはなぜか。
〇 第一章で提案されている解決策は,第二章で述べられている問題を生じさせる可能性があるのではないか。その場合どうバランスを取るのか。
〇 提案されている国際的枠組が悪用される可能性はないのか,その場合にどう対処するのか。
〇 解決策として出されている国際協定のドラフトは,なぜ手続的なルールを中心にしているのか。
〇 国際協定のドラフトでは,「重要な利益」「初期的調査」といった言葉が定義されていないが,定義すべきか。定義するとどのような問題があるのか。 

試問が始まる前は不安もありましたが,コミッティーの教授が三人とも人格者であることもあり,総じて意地悪な質問もなく,終始,友好的な雰囲気でした。「この論文の次に書くとしたらどんなテーマで書くか」という質問については,その場で全く答えが浮かばず(今落ち着いて考えればいくらでも出てくるのですが),「考え中です」と答えてしまいましたが,それ以外については,多少しどろもどろになりながらも,何とか回答出来たようです。

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左から,韓国人留学生W君,Y教授,私,R教授,トルコ人留学生M君

今後は,口頭試問で指摘された点を微修正したり,製本したりといった作業を粛々と進める必要がありますが,これでSJD課程の重要なステップは全て終了しました。あとは今週金曜日に卒業式があり,そして,来週担当する一週間の集中授業が,いよいよアイオワ生活の集大成になります。

良いニュースと悪いニュース?

さて,SJD生活も大詰めを迎えています。本日は,偶然にも良いニュースと悪いニュースが連続して入ってきました。

先日,本の出版とロースクールでの授業担当という二つの大きなプロジェクトがあるとお話しました。本の出版については既に原稿を書き上げ,ダメ元で大手二社に提案をしていたのですが,一社の編集長からメールがあり,「残念ながら当社では国際弁護士や留学生をターゲットにしていないので,期待に沿えない」とのことでした。まあ典型的なお断りメールです。かつてJ.D.に応募したときには無数のお断りレター・メールをもらったので,慣れています(笑)

ただ,メールの中に二回も,「自分としては本当にいい本だと思っている」と書かれていたので,社交辞令にしては珍しいなと感じました。そこで,「何かアドバイスしてもらえませんか」と返したところ,すぐに返信が来ました。「大きなLL.M.プログラムがある学校の教授にアクセスしてみたらどうか。自分も何人か知っているので紹介してもよい」とのこと。まあそこまでお願いするべきではないと思い丁重にお断りしましたが,きちんと評価してもらったのはありがたかったです。少しでも可能性のありそうな出版社には全部提案してみよう!という変な勇気(?)が湧きました。

そんなこんなで(覚悟はしていましたが)少し意気消沈していたところ,こんどはロースクールから連絡があり,従来から提案していた授業の担当が正式に承認されたとのこと。まあAdjunct Instructor(非常勤講師)ではありますが,前回のような「もぐり」で授業を二コマ担当したのとは異なり(それでも素晴らしい経験でした),正式な授業を担当できるのが嬉しいです。一学期分の授業を一週間に凝縮して授業をしなければいけないので,準備も授業も大変ですが,とりあえず一安心です。
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本職の博士論文のほうは,今週頭に最後の章の改訂版を指導教授に提出することができ,ヤマを乗り越えました。今は全体的なバランスの調整作業をしています。順調にいけば今月中に論文完成,プレゼン,口述試験と全て終わらせることが出来そうです。

SJD二年目春学期

早いものでSJD二年目も後半に突入しました。冬休みの間は日本に戻っており,ブログもしばらくご無沙汰してしまっていましたが,二月からまたアイオワに戻って研究生活を再開しています。今学期中にSJDを取得することを第一の目標としつつ,本の出版とロースクールでの授業担当という大きな二つのプロジェクトも手掛けています。

博士論文については,11月からほとんど動きがありませんでしたが,指導教授から,先週になってやっと第二章へのコメント,今週は結論部分へのコメントをいただくことができました。追加のリサーチがかなり必要なことが判明し,また,この段階になると全体の整合性もとっていく必要があり,完成前の山場を迎えている感があります。三月中に論文を書き終え,四月中には口述試験を受けることを目指しています。

冬休みの間は,主に本の執筆に時間を使っていました。以前日本語で教科書を出版したことがあるので,二冊目の本になります。今回は英語で,アメリカのロースクール留学生を対象に書いています。前回出版したときも,大部分を書いてしまってから出版社に持ち込みという無謀な挑戦でした。今回も第一ドラフトが完成したので,大手の出版社二社に早速送りつけました。まあ相手にされるかどうか未知数ですが,リジェクトされるのは慣れているので(笑),粘り強く出版してくれるところを探そうと思います。

また,昨年からロースクールに提案していた授業について,やっと今週,カリキュラム・コミッティーの承認が下りました。まだいくつか形式的な手続きが残っており,いつ授業を行えるかも決まっていないのですが,とりあえず教職に向けての大きなステップだと思っています。

今週末は,冬季オリンピック開催中ということもあり(?),SJDの中国人とトルコ人と一緒にスキーに行ってきました。車で一時間半(探せばもっと近くにもありそうですが),とてもコンパクトなスキー場でしたが,十分楽しめました。20年ぶりのスキーで,当時はロボットのようなウェアを着て「メーター」という二メートルもある板に乗っていました(おじさん世代にはわかるはず)。レンタルしたスキー板は,今主流の子供のスキー板のような短いもので,隔世の感がありました。

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二年目秋学期総括

アメリカではサンクスギビングが終了,スポーツではカレッジ・フットボールのレギュラーシーズンが終了,そしてロースクールでは今週で授業が終了し期末試験に突入と,私の周囲は一気に年末に向かっています。私も,既に提出済みだった第一章と第二章のドラフトについて,いろいろな方から頂いたコメントを全て反映し,導入と結論を付け加えたものを昨晩指導教授に提出し,めでたく今学期を終了しました!今学期中の博士号取得は残念ながらできませんでしたが,あとはこれからいただく第三章へのコメント反映,プレゼン,口述試験を残すのみとなりました。

いろいろなコメントを粛々とドラフトに反映させる作業をしていると,弁護士事務所やインハウス時代に契約書やレターをドラフトしていた時のことが思い出されます。そこで重要だったことは,もちろんコメントを正確に反映することが大前提ですが,とにかく相手方に「ボールを投げ返す」(throw the ball back)ことでした。理由もなくボールを抱えている(hold the ball)と,プロジェクトが進まず,関係者全員に迷惑をかけてしまうからです。
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(言葉は悪いですが)今学期中に投げるべきボールは全て指導教授に投げ返し,今はすっきりと冬休みを迎えられるという状況なのです。ちなみに,私のメールボックスには,いまだに「ball thrown」というフォルダがあって活用しています。ときどきチェックして,投げたボールがなかなか帰ってこない場合には,相手方にリマインドするようにしています。英語ではballを使った慣用句がいろいろとあって,問題ばかり投げかけてちっとも答えを教えてくれない教授のことを,「ボールを隠す(hide the ball)」といったりします。紛争などで相手方から重要な証拠を隠すときにも,同様の表現を使います。

今学期のスケジュールをまとめると以下のとおりになります。

2017年8月21日  秋学期開始
2017年9月13日  第二章ドラフト提出
2017年10月12日  Workshopにおける第二章プレゼン
2017年10月19日  米国法入門授業担当第一回
2017年10月19日  R指導教授から第二章ドラフトへのコメント受領
2017年11月2日  第二章改定ドラフト提出
2017年11月7日  D教授から第一章,第二章ドラフトへのコメント受領
2017年11月7日  第三章ドラフト提出
2017年11月16日  米国法入門授業担当第二回
2017年11月17日  Y教授から第二章ドラフトへのコメント受領
2017年11月27日  第一章改定ドラフト及び第二章改定第二ドラフト提出
2017年11月30日  秋学期終了!

また,ドラフトにいただいたコメントの中で,一般的にも役立ちそうなものについて備忘録として列挙しておきます。

〇接続詞が二つ以上出てくるような文はわかりにくいので,二つ以上の文に分ける。
〇代名詞は,よほど文脈から明らかでない限り使わない。
〇暗示や示唆をせず,言いたいことを明確に言う。
〇さまざまな主張を並べただけだと「カタログ」になってしまうので,全体を通して何が言いたいかという「大きなストーリー」を最初に提示する。
〇問題点を述べるときには必ず具体例を出す。そうしないと,問題は理論上のものであって現実には存在しないのではないかという印象を与える。
〇アメリカの法律論文では,「X教授が〇〇と主張している」というような表現をあまり使わない。誰が主張しているのかはあまり重要ではないし,主張内容を書いて脚注に引用元を載せておけば誰の主張かわかる。
〇解決策について述べるときには,単に解決策を提示するだけでなく,どこからその解決策が来ているのか,何をどうやって解決しようとしているのかも書くべき。

以下の二点は,私の英語の悪いクセのようなものですが。。。

〇批判内容を書くときに,critisizes that . . . という書き方はしない。critisizeの後には目的語が必要なので,critisizes X on the ground that . . . とする。
〇「主張する」と言いたいときに,claimは非常に強いので訴訟での主張など限定的にしか使わない。通常はargueを使う。

冬休み中は博士論文の作業は行わず,やりかけになっていた二冊目の本の執筆を(夏休み中にはあまり進められませんでしたが)今度こそしっかり進めたいと思います。しばらくブログの更新はお休みさせていただくと思いますが,また新学期になりましたら宜しくお願いします!良いお年を!(早すぎ?)

英語のベストフォント?

英語で文章を書くときに,フォントは何がいいのか迷った経験がある人もいるかもしれません。そこで今回は,私が愛読しているAbove the Lawというリーガルニュースサイトに,「履歴書に使うべきフォントは何か?」というちょっと面白い記事が出ていたので,御紹介します。

https://abovethelaw.com/2015/05/what-font-should-you-use-for-your-resume-apparently-this-matters-to-people/

Times New Roman
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トラディショナルだが,退屈な印象とのこと。

Trebuchet
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シンプルだけどファンキー過ぎないとのこと。

Helvetica
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地下鉄の標識に使う以外はおすすめしないとのこと。雪だるまのように中身の無さを雪で塗り固めるときに使うと良いとも。

Arial
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Helveticaの模造品とのこと。

Calibri
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はっきりとしていて読みやすいが,やや退屈とのこと。ドラフトを付箋に書くくらいそっけない,とも。

Garamond
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セリフ(文字の端にある小さな飾りのようなもの)の存在が,何か面白いことが書いてあるのではないかと思わせるが,Times New Romanほど主張しすぎないので,記事の筆者としては最もおすすめとのこと。

Comic Sans
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漫画のセリフに使うには最適とのこと。

日本語に訳してもなかなか伝わりにくい内容が多いのですが,非常にウィットが効いていて面白い記事でした。私としては,法律文書やレポートは,いくら退屈であっても,年配の教授やパートナーが最も見慣れているTimes New Romanの12ポイントを使うことを,まずはおすすめします。私は使ったことはありませんでしたが,Garamondもいいかもしれません。プレゼン資料の場合は,以前の記事でも書きましたが,Times New Romanだとやや読みにくく硬い印象があるので,見やすいCalibriがおすすめです。
http://uiowasjd.blog.so-net.ne.jp/2017-03-24

カレッジ・フットボール

さて,いつも硬い話題が多いので,今日は私が今最もハマっているといっても過言ではない,カレッジ・フットボールについて書いてみたいと思います。

今までの記事にも何度か出てきましたが,アメリカン・フットボールはバスケット,野球と並んでアメリカでもっとも人気のあるスポーツで,特にプロのチャンピオンを決めるスーパーボウルは,世界で最も注目されるイベントとして,日本でも有名だと思います。ただ,アメリカの一般市民レベルでは,プロよりも大学のアメフトのほうが人気が高いです。それには大きく三つの理由があります。

1.競技そのものが見ていて楽しい

とにかくパワーとスピードがすごい。オリンピック選手級の身体能力を持った大男たちが肉弾戦を繰り広げる様は,ルールがあまりわからなくても十分楽しめます。そして,一回のプレーで最大7点まで入り,30秒もあればプレーを完了することも不可能ではないため,一発大逆転のスリルがあります。記憶に新しいところでは,今年2月のスーパーボウルで,前半ファルコンズに3対28で負けていたペイトリオッツが,後半残り3分で同点に追いつき,延長戦で逆転勝利を収めました。また,今年1月の大学優勝決定戦では,文字通り残り一秒(!)でクレムソン大学がタッチダウンパスを通し,逆転でアラバマ大学に勝利しました。

ちなみに,カレッジ・フットボールで一番の注目選手は,ペンシルバニア州立大学のSaquon Barkleyです。180センチとアメフト選手では最も小柄な部類に入りますが,スクワットで240キロを挙げるほどのパワーとスピード(室伏並み)で,大柄な相手をひらりとかわし,時には引きずりながら突進します。今年のハイズマン・トロフィー(大学MVP)の最有力候補です。ルールが全く分からなくても,下記のビデオを見るとどれだけすごいかがお分かりになると思います。
https://www.youtube.com/watch?v=gtBKDkgVVMY

2.各州に複数のチームがあり,自分が卒業した大学や,地元で憧れの大学など,より身近に感じられる

1の理由はプロ・大学共通ですが,プロのチームが32チームしかなく,かつ州に偏りがある(たとえばフロリダ州だけで3チーム)のに比べて,全ての州(ただしアラスカを除く)にチームがあり,地元に密着しています。たいてい近辺にライバルチームがあり,アイオワはアイオワ州立大学(多くの州で,The University of XXとXX State Universityという二つの州立大学がライバル関係にあります),ネブラスカ大学,ミネソタ大学,ウィスコンシン大学などとのゲームが特に盛り上がります。

各チームにシンボルカラー(赤,オレンジ,黒などが多い)があり,ホームゲームはたいていその色に染まります。強いチームだと,チームカラーを着た応援団が大挙してアウェーに押し寄せることがあります。わたしがJDを取った時代のバンダービルトはめっぽう弱く,ホームゲームなのに隣町(車で二時間)のテネシー州立大学の応援団でスタジアムはオレンジに染まり,かつ40-0で負けるという屈辱のゲームを観戦してしまったため,それから私はここアイオワに来るまでカレッジ・フットボールに興味を失っていました。。。

3.ランキング形式でプレーオフのチームが決まる

これもプロと異なる点です。プロは各地区ごとに勝敗数で順位を決め,上位チームのトーナメント形式でチャンピオンを決めます。これに対し,カレッジではゆるやかな地域ごとに大学が自主的にリーグを作っており,たとえばアイオワ大学は,ミシガン大学,オハイオ州立大学,ペンシルバニア州立大学など強豪ぞろいのビッグテン(実際は14校なのですが)に所属しています。他にも,南部のSEC,西海岸のPac-12,東海岸のACCなど,全国にたくさんのリーグがあります。もちろんアイビーリーグというのもあるのですが,残念ながら六大学野球の東大のような(失礼)弱小チームぞろいで,選手の体も一回り以上小さく,強豪チームと(は試合をしませんがもし)やったら死人が出るレベルです。

それならリーグの優勝チーム同士で全米チャンピオンを決めるのかというと,そうではないところにミソがあります。全米チャンピオンを決めるためのプレーオフは4チームで争われるのですが,地域リーグが多数あり,かつリーグのレベルが異なるので,「プレーオフ委員会」という組織が作る25位までのランキングをもとに決めているのです。

ランキングを決める基準は必ずしも明らかにされておらず,単純な勝敗やリーグの順位も加味されるのですが,どのチームにどのタイミングで勝ったか負けたか,一チーム全12試合のうちどれだけ強豪と戦ったか,パス成功率や守備率などどれだけ数字が高いかなどを総合し,最終的には委員会の議論で決めるのです。順位は毎週変動し,たとえば先週ランキング6位のオハイオ州立大学に歴史的大勝利を収めた我がアイオワは,ランク外からいきなり20位に躍進しました。上記のように,かなり主観的な基準でランキングが決まるので,テレビや街中でも「こっちのほうが上だ,いや,こっちだ」などと毎日のように議論がなされています。カレッジ・フットボールは,アメリカにおける甲子園のようなものかもしれません。

オハイオ州立大学に55-24で大勝し,ゲーム後フィールドになだれ込むファンたち
USA Today.jpg
(Source: USA Today)

それでは最後に,クールな音楽にのせたカレッジ・フットボールのプレーハイライトをお楽しみください。
https://www.youtube.com/watch?v=x7JzbMskw88

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